自分の愚かさをさらけ出して、チェックリストを使うことができますか?

アトゥール・ガワンデの「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?」を読んだ。

 


 

これは、チェックリストに関するライフハックについて書かれている本ではない。1人の医師が、世界中で行われている手術の安全性を高めるために、専門ではない領域のプロに話しを聞き、自分のいる分野の欠点を認めながら、自らの行動を変えていく変革の物語だった。

医療には「単純な問題」「やや複雑な問題」「複雑な問題」が混在している。・・・私はこれらの問題について長い間考えてきた。私はできる限り良い医者になりたい。そのためにも、マニュアル通りに動くべき場合と、自分の判断で動くべき場合を見極めるのは非常に重要だ。単純な仕事は確実に行われるようにしつつ、創意工夫の余地や不測の事態に対応できる柔軟性も残したい。

このチェックリストにまつわる、複雑性と柔軟性の謎を著者は解き明かしていく。

建設業界のチェックリスト

まず取り上げられるのが、莫大な数100メートルのビルも安全に作り上げる建設業界のチェックリストだ。

新しいプロジェクトを始めるときは、まずチェックリストが作られるそうだ。十六種の代表者が話し合い、各業種の仕事をまとめた大きなチェックリストを作るのだ。・・・完成品は見事だ。数百人から数千二んの知識をそれぞれ適切な場面で、適切なタイミングで、適切に活用する、詳細なチェックリストができるのだ。

僕はここまで読んだだけで、「こりゃあ、すごい。自分の仕事でも、プロジェクト全体のチェックリストを作ろう!」なんて思いましたが、もっと大きなパラダイムシフトを建設業界は果たしていました。それは「提起スケジュール」と呼ばれるもので、予測される問題のためにコミュニケーションの予定を前もって入れておいたり、問題が発生した時にすぐにミーティングが計画され、そこで話し合いが行われることがチェックされる仕組みである。

単純な手順の間違いを防ぐチェックリストと、話し合いをすることで解決をもたらすコミュニケーションのチェックリスト、この2つの組み合わせがミソである。

医療業界のチェックリスト

医療業界では手術に関するチェックリストが紹介されている。手術チームのチームワークを向上させる取り組みもある。

手術開始前に看護師に自己紹介と懸念を話す機会を与えると、その後も問題を提起したり、解決策を出しやすくなる、という研究結果がでた。彼(ジョンズ・ホプキンス)らはこれを「活性化現象」と呼んだ。最初に何かを言う機会を与えられることで当事者意識と責任感が高まり、その後ももっと発言しやすくなるのだ。

航空業界のチェックリスト

さらに、最もチェックリストを有効活用しているのが航空業界である。安全なフライトのために、チェックリストを作成するために莫大な試行錯誤が行われてきた。

誤解されがちだが、チェックリストはマニュアルではない。・・・すべての手順を詳細に説明するものではない。チェックリストは、熟練者を助けるためのシンプルで使いやすい道具なのだ。素早く使えて実用的で、用途を絞ってあるという特性こそが肝要だ。

この勘違いを僕も起こしていたな、と気づかされます。もともとの自分の中のイメージでは、必要な工程をすべて書き出してチェックリストを作れば、項目を網羅できていればそれだけ完璧だと思っていました。けれど、手術やフライトなど、専門技術を発揮する場合には、スペースを埋めるのではなく、過不足の無い形にすることが大切なのだと気づかされました。

チェックリストを使う恐れ

どんな領域でも効果を発揮するチェックリストだけれど、そんなに普及はしていない。それは何故かも語られる。

人々が手順を忠実に守らない理由の一つに、硬直化が怖い、というのがある。機械的にチェックリストを使っていたのでは現実に対処できなくなる、チェックリストばかり見ていると心のないロボットの様になってしまう、と思い込んでいる。だが実際には、良いチェックリストを使うと真逆のことが起きる。チェックリストが単純な事柄を片付けてくれるので、それらに気を煩わせる必要がなくなる。・・・その分、・・・難しい問題に専念できる。

さらに医者としての著者自身の迷いも記述される。

医療では自主性こそがプロの証だと考えられているが、自主性は規律の対極にある。・・・一人ではとても習得しきれない膨大な量の知識を要する現代医療では、個人の判断ん任せるのは愚策だ。古い価値観にしがみついていては良い医療はできない。時々思い出したように「仲良く協力しあいましょう」と言っているようでは駄目なのだ。本当に必要なのは、絶対に協力しあうという決まりを作り、常にそれに忠実であることだ。

チームワークさえもチェックリストの対象になり、それを自分の職場でも試す価値があるかもしれないというのが、この本を読んで得られた一番大きなものかもしれません。


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