「日本語の文章術」まとめ その5

 絶版本要約も、いつのまにやら5回目です。今回は、第7章 正確な文章を書く、第8章 文章上達への心得、についてです。

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語順の原則

 今回の内容では、日本語の語順や文末についての解説が非常に丁寧に成されていました。まず、その言語の特性を説明し、次に、その使い方を説明するという方法は、理にかなっていると思います。

 日本語の特質は、締めの言葉が最後にくることはすでに述べました。最後にくる言葉が、文脈を決定するのです。つまり文脈の“的”はここにあるようなものではないでしょうか。・・・
 構文の上から大切な語順の原則を述べると次のようになります。
 「長く・重い語句を先に、短く・軽い語句を後に配置せよ」

 さらに、複雑な状況の中で、色々なルールにどう折り合いをつけていけば良いのかが詳しく解説されていきます。

主語と述語は近づける

 文が複雑になればなるほど、主語と述語とが引き離されるのはなぜでしょうか。文意を決定する述語に対する修飾語句が増え続け、増え続けた修飾語句が述語の前、つまり主語と述語の間に割り込むからにほかなりません。
 主語と述語が遠く引き離された文形で書かれた文章を読まされるのは苦痛です。決定の言葉(述語)が出てくるまで、文意未決のまま、読み手の意識は主語にしがみついていなければなりません。主語にしがみついていられる読み手はよほどしっかりした人で、普通は主語の意識が薄れてしまいます。・・・仮に脈絡をつかめても、読み手の疲労感は大きいでしょう。

 ぼくもこの手の文章を読むのは非常に苦手です。主語への意識を持ち続けることを努力して、それ以外の内容が頭に入ってこないという読者としての経験をしたことがあります。

 文章というと、一般に<主語から書き始める>という思い込みがあります。常識といってもいいでしょう。この“常識”を思い切って破ってみましょう。
 主語と述語の間に割り込む語句が長ければ長いほど、この方法は有効です。

 考えてみれば、主語と述語を近付ける原則と、修飾語と被修飾語を近付ける原則とは矛盾する関係にあります。文の構造が複雑になればなるほど、この関係は顕著になってくるのです。
 では、どうすれば解決するでしょうか。「間接的で長い修飾語句を先に、直接的で短い修飾語句を後に」という原点、“語順の原則”に変えればよいのです。例外はありますが、大概のケースは語順の原則が解決してくれるでしょう。・・・
 主語と述語を近付ける原則と、修飾語と被修飾語を近付ける原則とが矛盾する場合には、修飾語の原則を優先してください。

 文章術についての本では、色々な方法が紹介されますが、それぞれが矛盾した時にどう折り合いをつければよいかに言及してくれるものは少ないです。

連体修飾の重層構造を避ける

まずは、シンプルに書くことが大切です。

 「主語+述語」の単純な組み立てと、「一語一修飾」つまり一つの語句には一つの修飾語という心構えの大切さ・・・

ここでは、『これからの世界と日本』という文と、『これからの、世界と日本』という文が比較され以下のように解説されています。

読点の原則として、<後続の語を飛び越えて先の語を修飾する>場合と、<後続の語群をグループとして修飾する>場合とでは、読点の打ち方が同じになります。いずれの場合も「修飾する語の後に打つ」という読点の作法が働きます。

これは、すぐにでも使えるテクニックですね。

文末の重みを知る

 何も考えずにとりあえず書き始めるということの多いボクには、耳の痛い指摘がいくつもありました。

 日本語の特色を生かすためには、どのような心構えでペンを執ったらよいでしょうか。最初の一行を書き出す段階で最後の一行を念頭に置け、ということなのです。・・・
 決定の語句が最後にくるという性質の文章では、途中の語句や文は、締めくくりの部分を支える役割を持ちます。最後にきて文意が逆転してしまいますと、そこまでの“支え”が宙に浮いてしまい、読み手は「あれ?」と思うのです。お笑いとか言葉遊びとか、特別な目的でもない限り、読者を裏切るような書き方をすべきではありません。

他にも、この章には、副詞の陳述性を生かして文章の展開を読者に知らせる方法など、技術的な部分もたくさん盛り込まれています。

文章に書き慣れよう

文章を書く心得として、宇野千代の文章が引用されます。

毎日書くのだ。(中略)書けるときに書き、書けないときに休むと言ふのではない。書けないと思ふときにも、机の前に坐るのだ。すると、ついさっきまで、今日は一文字も書けない、と思った筈なのに、ほんの少し、行く手が見えるやうな気がするから不思議である。書くことが大切なのではない。机の前に坐ることが大切なのだ。机の前に坐ってペンを握り、さァ書く、と言う姿勢をとることが大切なのである。自分をだますことだ。自分は書ける、と思ふことだ。

文章に限らず、仕事や極めたい物事全てに適用できる心構えだと思います。継続する必要性、向き合ってみた時に体験できる視点の変化など。これからのブログライフでもしっかり経験していきたいものです。

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 第6章 悪文の条件。パッと見ただけで身構えるようなタイトルです。伝わりづらい文章とは、どういったものか?それをどのように書きかえれば、内容が分かりやすくなるのかを扱っています。

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 この章では、指示代名詞の繰り返しや、終止形がすっきりしない、「たり」をくり返さず使ってしまうなど、自分の癖と重なる部分への指摘も多く勉強になります。また、現在形と過去形の併用の仕方や、上手な列挙文の書き方など、具体的な方法が紹介されている所が嬉しかったです。

同語反復文

 まず、独り善がりな文や、体言止めの連続などは良くないと指摘があった後、同じ言葉をくり返す同語反復文について触れていきます。

同じ言葉の繰り返しはできるだけ避けるようにするのが文章の上手というものなのです。特に、同じ言葉を近づけて反復使用するのはよくありません。文章全体を疎略なイメージにしてしまいます。
・・・
使いたい言葉を安易に繰り返すことを抑えて、別の言葉、変化のある表現で展開するように心掛けましょう。

用語の繰り返し使用とは別に、「それ」「その」などの指示代名詞はなるべく用いないで、文脈で表した方がよいのです。指示する言葉の使い過ぎは、文章を貧しく感じさせます。

 この指示代名詞の使い過ぎは良くやってしまいます。さすがに同語反復をしないようには気をつけてはいますが、指示題名をかっこよく使おうとして失敗していることはこれまでたくさん経験しました。

 くり返しを避けていくためには、語彙を増やしていくとともに、その使い方を覚える必要があります。

ビジネス文や公用文では、「より」と「から」の区別が必要になります。「より」は比較を表すときに使い、起点を示すには「から」にしなければなりません。

「である」症候群

 この章を読んでいて、もっとも興味深かったのは「文末」についての指針です。悪文とリライト文の比較では、文末を変えただけなのにスッと意味の入ってくる感覚が全く違っています。

 「です・ます」の文体では、ある程度「です」と「ます」に固定されるのはやむを得ません。ほかに止め言葉がないからです。
 「ある・である」を用いた文体では、事情がまったく異なります。「行く」「なった」「ならない」「なる」「用いる」「指す」「赤い」「大きい」「~てみたい」など、動詞・形容詞のあらゆる終止形を自在に使いこなすことが可能になるからです。
 “もの書き”と呼ばれるプロの文筆家には、「ある・である」を用いた文章を書く人が多いのはなぜでしょうか。ひとつには、文末に変化がつけやすく多様性に富んだ作品をものするのに都合が良いからです。

 そして、過去形と現在形の文章を織り交ぜた書き方が紹介されます。

現在形の文章中に過去形が、過去形の文章中に現在形が、それぞれ登場することによって、各分の流れが引き締まってくるのです。文章の内容が、過去と現在になるわけではなりません。各分が形として過去形や現在形をとるのです。これも大切な原則の一つですから、頭に入れておいてください。
・・・
本来は、全体が過去形になる文章のはずです。この中に、さりげなく現在形を持ち込み、変化をつけているところに、文章力というものがあるのではないでしょうか。

 私はこれまで現在形と過去形を同時に使うのは良くないことだと思ってきました。例え、現在形と過去形を一緒に使って文章を書くときにも、「これは正しくないことだけれど、読みやすいのでこのように書こう」と、後ろめたいような気持ちがありました。この部分を読んで、自分の誤解に気づきます。英語学習での時制の一致の原則と日本語の書き方を、私は混乱して覚えていたようです。現在形と過去形の併用を「やってよい」と説明されただけで、今後の文章の幅は広がりそうです。

「である」文で特に注意しなければならないのは、「である」に準体助詞の付いた「のである」という止め方の用法です。
・・・
連体形というのは、外見上は終止形と同じです。ですから、終止形として用いればよいでしょう。「いるのである」「なったのである」「強いのである」などとせずに「いる」「なった」「強い」とすればよいわけです。

 「である」の連続はよくやってしまいますね・・・。文末のバリエーションを増やすことが豊かな表現に繋がるので、今後の工夫していきたいポイントです。

ものまね文

 ものまね文「ぱっと見て、すぐまねだなとわかる書き方はやめましょう」については、また、別のエントリーでまとめようと思います。

混合文体

 現在形と過去形の併用は勧められますが、敬体と常体の混同は明確に禁止されます。

対外者として読み手を意識するときには「です・ます」体を用い、対外者として意識しないとき、あるいはそのような意識の弱い場合には「ある・である」体を用います。

「です・ます」文体と「ある・である」文体とを混同して用いてはなりません。対者意識が支離滅裂の文章になってしまうからと、おわかりでしょう。これは重要な原則です。敬体と常体とが入り乱れて書かれている文章を見ることがあります。“混合文体”と呼ばれる、このような文章は決して書かないように注意しましょう。

 現在形と過去形は一緒に使っても良いけれど、「です・ます」と「ある・である」形は同時に使ってはいけないということですね。

引用符名文

 この中では、以前からよく理解ができなかった要旨の引用について書かれていました。

書物や論文などから引用するとき、引用しようとする箇所が長すぎるとか読みにくいとかいうようであれば、要点や主旨を伝えるという紹介の方法は許されます。ただ、伝えるべきポイントは自己の責任で、正しく表現しなければなりません。
・・・
 要旨紹介の場合には、全文を完全に理解し、これを自己の責任において正しく要約するという心掛けが求められます。その点さえしっかりしていれば、読者は難解な論文や読みにくい古文などに直接当たるという苦痛から解放されるという利点もあります。

 引用は原文で書かれている通りに載せなくてはならないと習っていたのに、「なんで自分勝手にポイントをまとめて書いているんだろう?」と不思議に思っていました。要旨の引用もれっきとした引用方法の一つなんですね。この方法がスマートに使いこなせるようになると、自分の主張を過不足ない量で表現することができるようになるでしょう。

まとめ

この章は、自分の襟元をただして、今後の「書く」行為を変化させていくのにとても役立つものでした。また、『文体論』の中で、ビュッフォンの言ってる「文体とは、人が自分の思想に加える秩序と運行とに他ならない」という言葉はとても印象深かったです。

ただ考えをテキストにするのではなくて、頭の中にある考えや矛盾する事柄、価値観などを、自分がどんな風に秩序立てていきたいかということを考えたいですね。

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 今回は、第4章 文章の構成法、第5章 小論文の書き方についてです。第4章では、二段階法、三段階法、列挙法など、さまざまな構文が紹介・説明されています。第5章では、小論文の書き方がまとめられています。広告文の段階構成も載っているのですが、私の読書目的とは若干異なっていたので、読み飛ばしてしまいました。第5章も若干想像と違った内容だったので、気になった部分のみを引用します。

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主題と文章校正

 文章作成の“こころ”は雑談意識とは違います。今、自分は何のためにこの文章を書こうとしているのか、この文章を通じて何を訴えたいのかを読者に対して強烈に意識することが必要です。
 主題とは、執筆者が読者に対して伝えたい、あるいは訴えたい事柄の核心と言ってよいでしょう。文章の作成は、この主題設定にはじまるのです。

 この主題を文章のどこに置くかが大切な作文技術なのです。…
 ここで大切なのは、第一には部分としての構造体をいくつに分けるかということ。第二にはどのような順序で配列し、組み立てるのかということです。

 主題が大切であると言うことは、繰り返し繰り返し指摘されます。そこについては、以下の記述が興味深かったです。

 現象を観察する場合の糸口と、文章を書こうとするときの糸口との大きな違いはここにあります。現象を分析し理解する場合の糸口には、先入観があってはなりません。ある意味での予測はあるかもしれませんが、到着点を予定したものであってはいけないのです。
 文章に立ち向かう執筆者の姿勢は違います。この場合の糸口では、到達地点をはっきりと予定しています。いや、到達目標への意識が鮮明であればあるほど、良い文章になると考えてください。
 文章の書きだしが大切といわれる理由はここにあります。書きだしが、文章の目標意識に左右されるからです。

この辺りの心構えについての違いは非常に勉強になります。つい、正しいことはどの領域でも共通すると考えてしまいがちなのですが、その細やかな違いを抑えておくことも重要です。

小論文の書き方

 論文に必要なのは、あくまでも論理に裏打ちされた文章の組み立てであり、うまい文句を羅列することではない。読み手に「なるほど」と思わせることのできる文章であれば、普通の言葉で書くのがいちばんよい。・・・
 “説得力”とは何か。読み手をして、同意もしくはそれに近い意志を引き起こさせる記述力である。説得力があるためには、論旨と論旨の間にスキ間があってはならない。同時に、論述の素材となる事実やデータがしっかりしていなければならない。

 資料や前提がしっかりしていなければ、“突き崩し”に防衛できない。論理のかみ合わせが不十分では、説得力がない。論旨にスキ間があっては、読み手を引き付けない。

 情報を収集することと、それを題材に文章を書き上げる二つの力を高めていくことが強調されていました。

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「日本語の文章術」まとめ その2

絶版本をまとめる喜びは、化石発掘のそれに似ている。すでに販売がされていない本に触れ、理解し、他者に伝えるという過程が、土に埋もれた化石を掘り出し、時間を越えて他者の前に表すことと類似しているためだろう。

なんて、「書き出しのセンテンスは一行で書け」という方法を実践してみました。今回は、奥秋義信の「日本語の文章術」まとめの第2弾です。

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上手な文章構成

著者は、単純な構成の文を作ることで伝わりやすく書くことができると主張します。

構成要素となる基文が単純明快であれば、よほどの“設計ミス”がないかぎり、文章全体が分かりにくくはならないはずです。単純な文とは、どのような構成かといえば、<主語+述語>という形です。

一つの語句には、一つの形容と心得てください。・・・形容の言葉というのは、控えめ、控えめに用いたほうがよいのです。二重三重の形容語句は、ただ感動を弱めるだけではありません。同時に“長文”の原因ともなることは、おわかりのとおりです。

この部分からは、適切な形容詞を持っておくこと。つまり語彙の大切さを考えさせられます。また、目新しい言葉を使って、飽きられることについては

文章にも、時代を超えた美しさというものがあります。それは普通の言葉、普通の言い回しにほかなりません。

書き出しは“短文”で

夏目漱石の「我輩は猫である」を例にしながら、文章の書き出しについて話しは進んでいきます。

平易な言葉を用いたら、内容が安くみられるとでも考えるとしたら、大変な心違いです。むしろ、内容をしっかり理解すればするほど、整理すればするほど、やさしい言葉で表すことが可能になります。自分の頭でかみくだいた言葉を使えば、書かれたものは自然にやさしくなるのです。

長めのセンテンスにしたのでは、短文でたたみかけられる切れ味が出てきません。二つに分けることによって、歯切れよく短い文を重ねていくことが実現するわけです。当書では、これをたたみかけ効果と呼びます。・・・書き出しのセンテンスは一行で書け。そして頭の三行で読ませろ。

書き出しをたたみかける書き方は、何度も例が出てくるので、ブログでもぜひとも使ってみたいです。

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「日本語の文章術」まとめ その1

 奥秋義信の「日本語の文章術」。学生時代に購入しましたが、今は絶版となっています。総ページ数724Pの分厚さのあまり、ずうっと積読のままでしたが、仕事柄文書を作成する機会も多いので読んでみようと思い立ちました。

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 何回かのシリーズに分けて、内容を要約したり紹介していこうと思います。

良い文章と悪い文章の区別

本書はぶ厚い本ですが、表現はとても読みやすく書かれています。まず、良い文章と悪い文章の区別を以下のように表現しています。

 「良い」と「悪い」との区別はつきつめれば、コミュニケーション手段としての文章が、有効に働いているかいないかで判断すべきでしょう。…正確にわかりやすく伝達行為を可能にする文章こそが求められているのです。

そして、内容はまず文章の種類を、叙述型文章と主題先述型文章に分けて説明をしていきます。

 一般に、論文や歴史的な記述などでは、導入部から始まって結論に到達する構文が選ばれます。これは叙述型文章といわれる型です。
 ビジネス文章やその他の実用文では、結論あるいは主題から書き起こし、内容を補足していく構文が選ばれます。これは主題先述型文章といわれる型です。新聞記事や放送ニュースがこの型なので、別名マスコミ型文章とも呼ばれます。

 こう考えると、ブログは主題先述型文章が多く選ばれるのだろうと思います。

 内容や場面によって適した文章の形があることを著者は指摘します。例えば、難しい言い回しが多用される法律文について

 法律文の場合は、ただわかりさえすればよいというものではありません。すべての抜け道を防がなければ、役には立たないからなのです。…
 実用文は違います。与えられた、その場面だけを明快に説明していれば十分なのです。あらゆる場面を想定する必要はありません。…
 法律文は法律文、実用文は実用文、というふうに区別して考えるべきではないでしょうか。実用文を法律文のような調子で書くのがいけないのです。

 これは、とても明快な指摘です。文章にも、目的やそれが読まれる場面があって、いわば文章のTPOにあった表現がつかわれるべきだということです。
 内容は、叙述型の文章と実務型の文章の構成の違いに向かっていきます。

文章術

 叙述型をそのまま逆立ちさせれば、実務型になると考えるのは早計すぎます。「ピラミッド」か「逆ピラミッド」かは、文章構成上の重要度を形に表したにすぎません。三角形で表した構文内の各面積は、文の量ではなく、重要度を示しているのです。叙述型では、序論→結論と書き進み、結論でまとめ上げますが、最後の結論に最大のウェイトがかかります。実務型では逆に、最初にくるh巣台に重点が置かれ、本文→“とめ”はこれを補っていく構成です。

パラグラフ

 文章を設計していく上で、私は段落をまとめるのがどうも苦手なのですが、そのあたりの説明も簡潔です。

 グループごとに思考や事実がまとめられ、配置されます。読み手はグループごとに意味をつかみ、読み進んで全体像を理解するという順序をたどるのです。このような基文のグループで、意味上一つのまとまった考えを表す文群を「段落」といいます。…段落の区切りを示すために、文章作法では、一字下げの改行を行います。これを「形式段落」といいいます。形式段落には絶対的な基準があるわけではありません。…形式段落に対して内容上からとらえた文群を「意味段落」といいます。意味段落にも個人差があるのは当然ですが、形式段落と意味段落とが一致しているのが文章表現としては望ましいという考えもあります。

自分の中では、意味段落と形式段落が異なる場合があって、必ずしも段落分けに正解がある訳ではないのだ、ということが目から鱗でした。

論文とビジネス文書

さらに、論文とビジネス文章の2つを比較していきます。

 叙述型文章の代表は論文ですが、論文ではなぜ結論が最後にくるのでしょうか。論文の結論は、読み手の合意あるいは納得を得るための手続きを抜きにしては、書くことが許されません。少なくとも、読み手が納得するであろう道筋だけは立てる必要があります。この手間を省いて結論を書いたのでは、独断になってしまうのです。独断は論文ではありません。いや、論文の自殺です。
 論文が、自ら求める結論への道筋を立てる行為――これを証明もしくは論証といいます。その意味では、論文にとって証明は結論以上に大切なものかもしれません。結論は、証明さえきちんとなされれば、必然的に導き出される結果にすぎないともいえるでしょう。論文とは証明の積み重ね以外の何ものでもありません。証明の積み重ねの延長線上にこそ結論があります。「論文は証明なり」といわれるとおりです。

 ビジネス文には証明は要りません。ここで最も大切なのは…主題なのです。
 主題には証明は要りません。…ビジネス分は、事実を前提としたコミュニケーション手段だからなのです。事実に証明は要りません。

 事情説明と論証とは違います。論証とは、主張を証明する事であり、事情説明は事実を明らかにすることです。

事実や主張、論証、説明などなど、ごっちゃになってしまいそうな概念を丁寧に紐解いてくれています。論文と新聞、どちらもソコソコ硬い文章ってことでいいんじゃないの?と思っていた自分の認識が恥ずかしいです。

まとめ

要は、ケースに応じて形式を選択すると理解してください。どのような文章形式が、求められる伝達目的に最も適しているかで選ぶことです。どの文章形式が優れているかではありません。まして、勝手な好みで“型”を決めるのは失敗の原因になります。

未だ読み進めている途中ではありますが、本書が分厚い割にとても読みやすく書かれていることに驚きます。これは一重に書き手の能力によるところが大きいと思いますが、それだけに、この本が絶版書籍であるというのは、少し寂しく感じます。こういった本こそ、電子書籍化してもらって読まれていくべきではないだろうかと感じています。

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